2017年11月7日火曜日

糖尿病進むと「古くなった果物」、肝臓悪いとアンモニア…体臭に潜む健康悪化

五味クリニック院長 五味常明
 近年、体から出るニオイを気にする人が増えています。でも、自分の体臭がイヤなわけではなく、「自分の体臭で他人を不快にするのではないか。人から嫌われるのではないか」と悩むのです。以前は体のニオイを気にするのはほとんど若い女性でした。それが、最近では中高年の男性や高齢者にも「加齢臭が出ているのではないか?」と心配する人が増えています。久しぶりに会った孫から「おばあちゃん臭い!」と言われたのをきっかけに、自分の体臭が気になって外出もできなくなったケースもあります。

 体臭で悩む人が増えた背景は、社会が豊かになるのに伴い、個人主義や清潔志向が強くなったことも関係していると、私は思っています。昔の大家族では「お父さん臭い!」なんて言われませんでしたね。人間関係が希薄な社会になればなるほど、ニオイに敏感になり、お互いの体臭が気になってくる傾向があります。しかし、体臭というものは、生きているかぎり誰にでもある「生活のにおい」です。ひとつの個性ですので、過度に無臭になろうとすることは、自己の存在を否定的にとらえることと、どこかでつながっている気がします。
体臭指摘されたら…感謝すべき
 しかしです。「たかがニオイ」と無視していられない場合も、実際にはあります。体から出るニオイが、その人の健康状態が悪化したサインであることもあるからです。たとえば、糖尿病が進むと「古くなった果物」のようなニオイがしたり、肝臓が悪くなるとアンモニア臭が強くなったりします。

 「オヤジ臭」などと揶揄(やゆ)される加齢臭も、加齢とともに体の酸化が進んだことを示しています。加齢臭は、皮膚のうるおいを保つ皮脂腺の脂が酸化されてできるニオイです。これはちょうど、血液中に増加したコレステロールが活性酸素で酸化され、動脈硬化や生活習慣病に移行する過程と似ています。つまり加齢臭は一種の「メタボ臭」と言ってもよいのです。ですから、中高年になって奥様から「あなた最近ニオイが強くなったわよ」と指摘されたら、「健康に気をつけてね」という意味かもしれません。不機嫌になるより、感謝すべきでしょう。